複雑系と金融工学、ネットワーク工学

複雑系とは、端的にいうと多数な要因の相互作用により、単純なモデルで扱えない系を扱う学問です。
ネットワークとして複雑系はスケールフリーという分野を開拓しました。しかし、統計として複雑系は、確率分布が収束せず、発散であるというどうしようもない結論がでています。確率分布が収束しないということは、いつか大幅に値が変動することがあり、平均を求めることができないということです。

そんな結論がでても、「シミュレーションをいくらまわしても無駄です」、「計測しても予測はできません」となるので、理論屋はいいかもしれませんが、工学屋はなんだかなぁというところです。感覚的にはそうであることがわかっていますが、問題として解けないですよね。

その複雑系の方々により、為替や株価変動も、確率分布が収束せず、発散であるという結論がでています。

その端的な例が、今回の一連の金融事件です。対数正規過程を仮定してデリバティブ取引というによって、リスクをヘッジしていたと金融関係者が思い込んでいました。しかし、対数正規過程で近似できない発散部分で、デリバティブ理論が崩れてしまい、レバレッジをかけていたため、損失が何倍となり連鎖してしまったというところです。

金融工学屋は、たぶんネットワーク屋と同じで、変動なんてモデル化できないけど、とりあえず近似してモデル化して、理論を構築したんだろうと思います。しかし、それをわからないまま幅広くユーザがつかってしまいました。ネットワーク工学は、予測がはずれても設備投資計画が狂う程度で会社に損害を与える程度ですが、金融工学レバレッジという魔法でとんでもないことになってしまいました。

今後、金融工学屋は、対数正規過程で近似できない部分がレバレッジによって膨れ上がるインパクトについての評価が必要ではないでしょうか。もしあったら、見識を広めてください。後、金融屋は、最低ブラック・ショールズ価格決定の式ぐらいの理解が必要です。そのためには、対数正規過程は実際とどこまで合うかという、確率と統計に関する見識が必要ですが。